AmazonではなくMicrosoftに~論争を呼ぶJEDIクラウド契約締結

遅延、法的闘争、従業員からの抗議、トランプ大統領の介入を経て、米国防総省(DoD)は長期にわたり数多くの論争を呼んだJEDI(Joint Enterprise Defense Infrastructure)クラウド契約をMicrosoftと締結しました。

本契約は10年間継続される予定で、総額100億ドル相当になると言われています。

巨大な取引

国防総省は声明で「この契約は、3段階の(セキュリティ)分類レベルすべてにおいて、最新のクラウドインフラにより、重要かつ緊急のまだ対処されていない軍の要件に対応する。」と述べています。

JEDIは2年間で100万ドルの基本契約から始まりますが、その期間内に国防総省は2億1,000万ドルを費やすであろうと想定されています。その後、レビューが行われ、残りの8年間でさらに大きな投資が行われます。

「国防総省はオプションの検討に入る前に契約上のパフォーマンスを厳密に審査する」と同局は言います。

「国防総省は、DoDエンタープライズクラウド環境の機能を多様化するため、さまざまなクラウド契約の機会を継続的に評価・追求し続ける。よって追加の契約の可能性も想定している。」

– Sebastian Moss/DCD

DoDは、過去2年間に他のクラウド契約に110億ドルを投じている点を挙げ、他のクラウド契約の可能性を強調することに熱心でしたが、JEDIは軍のコンピューティングニーズのバックボーンを形成することが期待されているものです。

今年初めに公開されたクラウド戦略に関する文書で、DoDは次のように述べていました。「DoDの主なJEDI導入の傾向は、汎用的な目的でのクラウドコンピューティングの活用である。ミッションのニーズが汎用目的で実現できない場合にのみ、目的に合う代替案を検討する。」

またJEDIは、重要なエンタープライズクラウドサービスを、人工知能センター(JAIC)に提供します。JAICは、国防総省の新たな野心的な取り組みであり、戦闘用のAIシステムを構築します。

簡単な道のりではなかった

契約の規模と、ペンタゴンの軍事計画に対するその重要度もあり、今回の発表に至るまでの過程は長く曲がりくねっていました。

最初のRFIが2年前にリリースされた直後に、JEDIはすぐにOracle、IBM、Microsoftなどの企業からの苦情を受けました。彼らはこれを巨大な単一契約にすべきではなく、小規模契約に分割すべきであると主張していました。

もう1つの問題は、RFIが公開された時点で、入札要件すべてを満たしているクラウドプロバイダーは1社、Amazon Web Servicesしか存在しなかったという点でした。結果的には、訴訟で長引いた2年もの間で、Microsoftが要件を満たすことはできましたが。

Gage Skidmore /Flickr

Oracleはそこに不正行為があると主張し、一連の法的訴訟を立ち上げました。それらはすべて最終的に却下されましたが、プロセスを遅らせた事は、非常に成功したロビー活動キャンペーンであったと言えます。同社は、シングルベンダー契約の必要性に異議を唱えるシンクタンクに資金を投入し、AmazonがJEDIのRFP要件作成に影響を与えたと主張する文書を作成しました。その文書はどういうわけかトランプ大統領のデスクに届いたのです。

トランプ大統領が、ワシントン・ポストを所有するAmazonのCEOジェフ・ベゾス氏を否定的に見ていたことは既に知られており、またFox News上で各著名人が頻繁にAmazonによるJEDIへの贈収賄の可能性を指摘していたこともあり、AWSがJEDI案件を受注するのを阻止するためにトランプ氏が介入するかもしれない、といった様々な噂が年間を通じてありました。

今後発売される書籍「Holding The Line: Inside Trump’s Pentagon with Secretary Mattis: 著者Guy Snodgrass氏」の主張によると、トランプ氏が2018の夏にマティス前国防長官を呼び出し、「Amazonを潰せ」とJEDIへの入札チャンスを無くすよう直接指示があった、とTask&purposeはレポートしています。

マティス前国防長官のチーフスピーチライター兼コミュニケーション・ディレクターのSnodgrass氏は、こう主張します。「小規模グループ内で事実が伝わった。マティス氏はこう言っていた。「私たちは”これ“を今実行(暴露)するつもりはない。法的にも倫理的にも本により実行(暴露)する。」」マティス氏は後に辞任し、その後解雇されました。

知りうる限りトランプ氏はその電話以降積極的に本件への介入はしていませんでしたが、2019年7月に公に調査を呼びかけました。その時点で、OracleとIBMによる法的訴訟はいくつかの調査を経た後棄却されていました。

「ペンタゴンとAmazonとの契約に関して、多大な抗議が寄せられている。」とトランプ氏は当時記者団に語っていました。

「彼らはこれは競争入札ではなかったと言っている…世界的に偉大な企業らが不満を言っている。Amazonと国防総省には何か関係があると、だから私はそれを非常に厳密に見定める為に調査を依頼する。一体何が起こっているのか?と。」

その後すぐに、DoDのスポークスマンElissa Smith氏は、「情報に乏しく、しばしば作為的な憶測」を根拠としているとし、Oracleを批判しました。

彼女はさらにこう付け加えました。「この調達作業に直接関与する国防総省の役人及びJEDIに関し重要な判断を下す責任者は、常に軍の利益を第一に考え、バイアス、偏見、または自己利益なく行動しました。」

しかし、DoDは、数日後に再びトーンを変えました。トランプ大統領に任命されたマーク・エスパー新国防長官は、就任後わずか11日後に、JEDIに関する調査を実施すると宣言しました。

スポークスマンのSmith氏は、次のように述べていました。「議会議員やアメリカ国民への約束を守りながら、エスパー長官は、JEDIプログラムを調査しています。彼の調査が完了するまで、プログラムに関する決定は行われません。」

しかし、数か月後、エスパー長官は何か重要な事を思い出したかのように動きました。彼の息子はIBMで働いています。「法的に義務付けられてはいないが、彼の成人の息子が元々の入札ベンダーであった1社(=IBM)に雇用されたため、情報会議の後に、彼は自身を意思決定への関与から外した。」とDoDは先週の始め(10月22日)に報告したばかりでした。

その際、国防総省は、デビッド・ノーキスト次官補の下で調査は継続すると伝えました。調査が正式に終了したかどうかは明らかではありませんが、ノーキスト氏が引き継いだ後、(わずか)3日間の調査の中で契約はMicrosoftに与えられました。

「アワードに先立ち、当該部門はDoD監察総監と協議を行い、進むべき決断を通知した。」とDoDは声明を発表しました。

Amazonは声明で「この結果に驚いている。」とし、「純粋な製品比較について詳細に評価」を行うと「明らかに異なる結論につながるはずだ」と付け加えました。

Microsoftはまだコメントをしていません。受注を祝うべきではありますが、契約に伴い、さらなる従業員からの抗議に直面する恐れも想定されています。

「Microsoftの従業員の多くは、私たちが構築したものを戦争の為に使うべきとは考えていません。私たちがMicrosoftで働くことを決めたとき、“地球上のすべての人がより多くのことを達成できるように”という希望を持っていました。私たちは人命を終わらせたり、致死率を高めるような事は意図していません。」と従業員団体は昨年、公開書簡を提出していました。

「もしMicrosoftが辞退した場合、他の企業が単にJEDIを獲得すれば良いと言う人々へ、その企業の従業員は同様の行動を起こすよう願います。Google、Salesforce、およびAmazonで行動を起こした人々と同様に、テクノロジー企業のすべての従業員は、あなたの仕事がどのように使用され、どこで適用されているのかを認識し、あなた自身の原則に従い行動するよう願っています。

Data Center Dynamics

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