【特集記事】「冷媒」を取り巻く事情から、データセンターの変化を考える

ヨーロッパでは規制によって、特定の冷媒の使用が段階的に廃止に

気候変動への対策として温室効果ガスの削減を目指すことは、データセンターにおいて冷却装置のあり方を変えるような大きな影響を持ちます。

多くのデータセンターは、外部の気温(温度差・外気冷房)をそのまま使うなど、コストをかけずにデータセンターの温度調節ができるようになることを熱望しているが、どんな土地であっても年間を通じてなにも使わずに管理することは不可能です。そのため、エアコンなどの冷却装置を設置してデータセンター内の機械を適切な温度に保つようにしています。

エアコン設備は、これまでも地球環境への影響を指摘されてきました。その大部分は、冷媒の地球温暖化係数(*GWP:二酸化炭素を基準とし、地球温暖化への影響度を示す指標)からわかります。規制は徐々に厳しくなり、冷媒をより環境に配慮したものに変えなければならない時期にきています。同時に、それはデータセンター内でも確実に効果を発揮する質を持つものでなければなりません。

変化の訪れ

冷却装置で使われているHFC冷媒は、地球温暖化係数が高いことから段階的に廃止することになっています。
この結果、売り手はHFC冷媒の価格を引き上げ、ほかの燃料の取り扱いに向かっています。機材メーカーは、このまま価格の上がるHFCを使用するか、ほかのものに乗り換えるかしかないようです。

現在のFガスのルールに沿って考えると、HFCの価格は毎年上がり、使用することへの圧力も強まります。しかし問題は、ほかの燃料への乗り換えにはいくらかの不利益を伴うことです。

代替品は、およそ値段が高いものばかりで、可燃性のものもあります。

なぜ国際的な環境規制のなかで、エアコンに可燃性の液体を使うことが組み込まれているのでしょうか?
Stulz社のプロダクトマネジャーであるNatascha Meyerは、それは必然であるとし、
「GWPが低いということは、冷媒が外気と触れたときに早く劣化するということです。適切な温度、冷却機能を保つ方法は、科学的に反応させることだが、高い反応性を持つということは同時に可燃性が高いことを意味することが多く、作業員と機械の安全性リスクをきたすものです。」と述べました。

GWPが低く、かつ、可燃性が低い製品も無いことは無いが、場合によってはそれらの製品はより使用が難しいこともあると、Vertiv社のマーケティングディレクターであるRoberto Felisiは言います。
毒性を持つことが、その要因です。北半球の国の中には、アンモニアの使用を求める圧力団体もあり、確かにアンモニアは天然由来で不燃性です。しかし、安全性の面ではどうでしょうか。自分の家の中でアンモニアが使われてもいいと思えるでしょうか。

前出のMeyer氏は、ひとつの可能性と目されている「R1234yf」も実際は価格だけでなく毒性の面からも使用は論外としています。「R1234yf」は水と反応して人体に影響を及ぼすフッ化水素酸を生成するため、現在の市場での使用は、慎重にならざるを得ません。

R1234ze

「R1234ze」は、冷却装置側を調整すればすぐに使用することが出来ることから、今最も有力な冷媒として注目されています。しかし、問題が無いわけではありません。Meyer氏によると、
「我々はCyberCool 2 でこの冷媒を使えるようにしたが、R1234zeは体積当たりの冷却効率が悪いのです。この結果、これまで1,000kwまで冷却できた装置が、R1234zeを使うと同じエリアでも750kwしか冷却できなくなるのです」
と述べています。
また、調整を施した冷却装置ではエネルギー効率が悪くなるため、顧客はより多くの空調用スペースを準備する必要が生じます。
冷却装置を設置するだけのスペースを確保できるかが、より重要な懸念事項となるかもしれません。そのため、当面の間は、企業は継続してR134aやR410aをベースに冷却装置を運営し、そして、いつの日かFガスの規制に直面することになるでしょう。

結局将来的に、より多く冷媒に出資することになるかもしれません。
これまでと比べどのくらい多く支払いをしなければならなくなるかは、予測不可能です。Meyer氏は、「2016年に、冷媒の利用者たちは冷媒の蓄えがあり、そのため大幅な値上がりは蓄えが少なくなるまでは起きないと考えていました。しかし、2018年になりFelise氏は、冷媒の値段は予想していたよりもはるかに高くなっている」といいます。
R410aの価格はキログラムあたり7ユーロから40ユーロへ、5倍近く、値上がりしているのです。

長い時間軸のなかで見てみると

現時点での影響が一時的なものだという考えもできます。
Felise氏は、“冷媒の価格は、冷却装置を運営するコスト全体の中では数パーセントに満たない」と指摘している。とはいえ、冷媒の価格は上がり続けます。長い目で見れば、既存の冷却装置の維持し続けるのも難しい(コストも高くなっていく)ことを考慮すれば、そのうちにとってかわられるかもしれません。

こうした値段の高騰は、大規模な生産者なら資金力にモノを言わせてFガスをより安く手に入れ、事業を継続しながら古いシステムを刷新していくこともできるでしょうが、小規模な生産者にとっては、耐え難いものでしょう。

冷媒について長いスパンで変化を目指していくのであれば、“穏やかな可燃性”を持つ冷却材を混ぜ合わせることでGWPを1500から600まで下げることも可能だとFelis氏は言います。
これは、データセンターの設計において、冷媒を用いた個別の装置、分離したシステムを採用するのではなく、冷却水を循環させる装置へのシフトを後押しすることにもつながるとも指摘しました。

これまで、冷却装置・分離システムの発展によって、冷媒を循環させることであらゆる場所に冷房を設置できるようになり、棚にさえ冷房を入れることもできるようになりました。
これは一見良いアイディアのようにみえるが、そのためには長いパイプが必要となり、大量の冷媒を用意しなければならず、結局、コストが高くなります。また、可燃性のガスが循環することによる危険もあり得ます。

「個別空調では、100mもの長さに及ぶパイプが必要となることもあります。個別空調を採用すると、運営コストの10%あまりを冷媒のための費用にとられるという試算もあるほどです。分離システムは、現実的な方法ではなくなってきているのです。」とFelis氏は言います。

最もあり得る規制は、現在のトレンドを強化することであると考えられます。エアコンのユニットを建物の外に配置し、中で冷却された水を循環させることで、使用する冷媒の量を減らすことができ、可燃性物質がホワイトスペースで循環するのを避けられます。

Felis氏「冷めたい水を用いた解決策が増えています。冷却水を使えば、冷媒は建物の外にある小分けのユニットにだけ設置すればよい。この方法は、外の冷却装置と断熱蒸発冷却システムとの連結が簡単なので、潜在的に効率性をあげることにつながるかもしれません。」

もちろん、水の利用はこれまでと比べて高価であったり、地域によっては供給が少なかったりと劣る点もあります。

すべての環境に配慮した決定は、トレードオフの関係にあります。「冷媒の使用を減らす」ことを目的として「水の使用が増える」現象も起きているが、今度はそれがどこかで、環境に負の影響をもたらすかもしれません。これらの動きはデータセンターの建設会社に効率性の悪い冷却装置を作らせることになったり、データセンターでは冷媒による環境への影響を減らす代わりに、より多くのエネルギーを使うことて、多くのカーボンフットプリントを産み出すことにもなりうる可能性もあるのです。

<追記/2018/9/12>
コラム:フロンガス規制による影響

データセンターで利用されているチラーは、二酸化炭素よりも数千倍大きなGWP(地球への影響度)を有するフッ素化炭化水素(HFS)を使用しています。このHFSの主な構成物は、数百kWまでのシステムで使用される「R410a」と、さらに大きなシステムで使用される「R134a」です。

冷媒は、これまでも環境への配慮から定期的に規制がかけられてきたため、「またか、、、」という感覚を覚えるかもしれません。HFC自体は、オゾン層破壊という環境影響のために禁止された塩素化炭化水素(CFC)の代替品として導入されました。

「数年前、冷媒はR22からR47cに変更し、その後、R410aへと変更されました。過去15年で、3回も、冷媒の見直しがあったのです。」とVertivのプロダクトマーケティングディレクター、Roberto Felisi氏は述べています。

近年影響を与えている規制として、ヨーロッパのフロンガス規制(2015年)があります。大手化学会社によってが生産・販売(または輸入)できる上限が設定され、使用が禁止された冷媒は段階的に廃止されます。

これはあくまでも欧州のルールであり、EUの外へ輸出される場合は、輸出時には冷却装置の中を空にして出荷し、到着地で対応することになります。
しかし、フロンガスの使用抑制と削減に関する「世界的な合意」は、2016年にルワンダで可決され、2019年から施行されるはずです。
重要な点は、データセンターは空調市場のほんの一部にしかすぎませんが、全体でみると非常に大きな市場です。そして、誰しもが、快適な空調を求めているのです。
市場全体が非常に大きく、HFCsの地球温暖化の影響は甚大な為、ルワンダでの同意は、地球温暖化防止のための最大の一歩と言われています。

米国のトランプ政権は、気候変動に関するパリの合意と同様に、ルワンダの取り引きを認識し、それから脱却する可能性もあります。しかし、現時点では、ルワンダでの同意は守られています。

– Data Center Dynamics
原文はこちら