リチウムイオン電池がVRLAの代替手段になる為には【特集】

今日のデータセンターはこれまでになく複雑になってきていますが、過去30年間で変化していないことが1つあります。バッテリーは重要ですが、パワーチェーンにおいていまだ不完全な部分です。データセンターは長い間、数十年前の制御弁式鉛蓄電池( VRLA )バッテリーに翻弄されてきました。

しかしそれは変わり始めています。サイズと重量を削減し、バッテリー寿命を延ばすことで家電製品に革命をもたらした約30年後、リチウムイオン電池はデータセンターでのVRLAの代替手段として浮上しています。Research and Marketsの「グローバルデータセンターのUPS市場に関するレポート」によると、リチウムイオンバッテリーは2025年までに UPS バッテリーの市場シェアの35%を占めると予想されていますが、それは過度に保守的かもしれません。

それは進化している

リチウムイオンの利点は明らかです。最も重要なことは…

– 長寿命:リチウムイオン電池はVRLAの4倍も長寿命で、通常でも2〜3倍長く持ちます。なぜそれが重要なのでしょうか?バッテリーに関連する最も大きなコストは交換時です。多くの場合、VRLAバッテリーは、リチウムイオンバッテリーを1回交換する期間で、複数回も交換する必要があります。もちろん、すべてのバッテリーと同様、寿命と交換請求には信頼できるドキュメントが必要です。

– 冷却コストの削減:バッテリーには必要とされる冷却や、また関連コストに影響する多くの変数がありますが、いくつかのリチウムイオンバッテリーはVRLAよりも高い周囲温度で動作し、バッテリー冷却コストを最大70%削減できます。

– Wikimedia Commons/Luca Galuzzi

留意すべき1つの重要なこと:リチウムイオンバッテリーシステムは、エネルギーの保存と供給に活用される化学物質です。バッテリー管理システムは、過度の充電や放電、極端な低電圧・高電圧、および高温環境からバッテリーを保護するために不可欠です。各セルまたはセル・グループは監視され、データセンター管理者の操作を必要とせずに継続的に自動制御されます。さらに、バッテリーの稼働データは、追加コストを掛けずに他の監視システムにエクスポートできます。

VRLAにはない複雑さもありますが、今日のバッテリー管理システムと統合バッテリーストレージソリューションは、リチウムイオンの導入を簡素化します。

John B. Goodenough氏( リチウムイオン二次電池開発の第一人者 )

業界がリチウムイオン電池の普及に向けて、進化する消防法に適応していくことは重要です。NFPA1やIFC 2018などの規制は、現在徐々に採用されてきており、UPSバッテリーの導入意思決定プロセスに新たな要素をもたらす可能性があります。

これらの新たな消防規制は、(キャビネット内で発生した火災が他のキャビネットに広がる可能性を製造メーカーが示さない限り) リチウムイオンバッテリー搭載キャビネット内の最小区画を指定します。残念ながら、この火災試験の要件には合否基準がまだありません。基準が策定されるまでの間は、導入計画に対し合意を得るために、所轄の消防署と直接火災試験結果を共有する必要があるかもしれません。

合否試験と承認のメカニズムは不確実性を軽減しますが、より安全な職場環境を確保するための設計努力は称賛されるべきです。この動きは、リチウムイオン電池の採用を早期に踏み切った自動車業界で起こったことと似ています。業界がこれらのバッテリーの安全要件を確立すると、メーカーはそれらの要件を満たすように製品を設計しました。おそらくデータセンターでも同じことが起こるでしょう。

データセンター管理者にとって重要なのは、専門知識を持ち、必要なテストを実施できるリチウムイオン・サプライヤーと協力し、ソリューションの安全性を確保することです。サプライヤーは消防規制に順応し、業界はこれらの努力により、より安全になりますが、一部のリチウムイオン製造メーカーが安全に関する責任を先導し、他の製造業者はそれに従うでしょう。リーディング企業を特定し、彼らと協力していきましょう。

進化する安全基準以上に、初期コストがリチウムイオンの採用を妨げる主な理由となる傾向があります。リチウムイオン電池の初期費用はVRLAよりも高く、平均で約1.75倍程度ですが、その差は日を追うごとに縮小しています。長期的な視野を持ち、 TCO を検討する柔軟性を備えた組織は、リチウムイオンに大きな価値を見いだすことができます。初期導入投資コストだけを見るのではなく、設置コスト、交換および保守コスト、冷却コストの削減、そしておそらく最も重要なことには、 無限 のVRLA交換サイクルを回避できる魅力などを総合的な コスト比較で判断すると、実際にリチウムイオンが好まれるでしょう。

リチウムイオン電池には多くの種類があります。リン酸鉄リチウム(LFP)、リチウムイオンマンガン酸化物(LMO)、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)などがあります。LFPとLMO / NMCは、データセンターで推奨される選択肢であり、それぞれ要求される動作時間に基づく利点を持っています。今日のデータセンターで使用されるリチウムイオン電池の多くは、既に電気自動車やハイブリッド自動車で使用されており、十分な評価がなされています。

歴史的に、データセンター管理者は保守的であり、彼らの生計が信頼性重視に依存する理由は十分理解できますが、コストを削減し、今日のネットワークに課せられている新たな要求事項を満たすためには、より多くの組織はイノベーションを受け入れていかなければなりません。

リチウムイオン電池は、VRLAの単なる代替品ではありません。多くの場合、それは優先的に検討されつつあります。メリットが非常に明確に定義され、運用実績が増えてくれば、データセンターのUPS市場でリチウムイオンが継続的に市場シェアを獲得していく可能性があるでしょう。

【原文著者】 Jeff Kessen氏: Vertiv社 グローバルエネルギー部門VP ※DC ASIAにて翻訳および一部編集

Data Center Dynamics

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