CERN、LHCアップグレード用HPCデータセンターモジュール10台を購入

CERNが取り扱うデータは膨大なので、データセンターと実験場の物理的距離を近づける

欧州の粒子物理学研究所のCERNは、世界最大の粒子加速器である LHC (Large Hadron Collider)へのアップグレードに起因する膨大なデータを処理するために、データセンターモジュールを10台発注しました。

High Luminosity( HL )をLHCにアップグレードして、CERNはヒッグス粒子発見の次を考えています。物質と宇宙に関するより根本的な謎を解明するために、より多くのデータを集めるでしょう。アップグレード作業の進行中、チームが個別に機器を見直しています。そのため、データレートが上昇してしまったので、LHCから27km圏内の実験場近くにマイクロデータセンターを採用することになりました。プレハブモジュール10台は、 ALICE およびLHCb実験機材の真上の地上階に設置されます。

コリジョン多発

LHCの実験データには深刻な課題があります。CERNの衝突実験では、加速器を使って高エネルギー粒子同士を正面衝突させます。この衝突を研究して、微細な事象から膨大なデータを得ます。より多くの衝突を発生させれば、もっと科学的発見が可能になります。

HL LHCのアップグレードにより、さらに多くの衝突が発生します。過去3年間で、LHCは1.5×10の16乗個の衝突を発生させました。これは150「 インバース・フェムトバーン 」と見なされています。

アップグレード後には60%増えるでしょう ―― 最終的に4,000フェムトバーンに増加する可能性があります。

もっとシンプルに言うと、現在のLHC構成で、2017年に約300万ヒッグス粒子が発生しました。高輝度版になると、毎年1,500万個量産するでしょう。

2019年から2021年の間、LHCはロングシャットダウンを実施します。この間、ALICEと LHCbの2つの実験で、実験機材をアップグレードし、より大量のデータを処理するために新しいデータセンターハードウェアを追加します。それ以外の実験は、2024年から2026年の間に実施される次のロングシャットダウン時にアップグレードされる予定です。

ALICEとLHCb

ALICE(大型イオン衝突実験)とLHCb(大型ハドロン衝突実験)は、どちらもアップグレードされる予定で、ベルギーのAutomation Datacenter Facilitiesから、合計10個のプレハブの「SAFE」モジュールを追加します。これらのモジュールは全て、人的に可能な限り実験場に近い位置に設置されます。単純に膨大な量のデータを収集する必要があるためです。

フランスのサン・ジュニ・プイイ村に近くのALICE実験場では、ビッグバン直後の状態を再現しています。太陽の中心より10万倍以上高い温度で鉛イオン粒子を衝突させ、クォークとグルーオンを観測することができます。

LHCbはbまたは「美しい」クォークを研究して、物理学パズルを解明しようとしています。ビッグバンが宇宙を歪曲させた時、何が起きたのでしょうか? 宇宙は、ほとんどが通常物質、そして極少の反物質で成り立っています。

LHCb実験は、1MHz(100万回/秒)の画像から40MHz(4,000万回/秒)の画像をキャプチャするように更新されるでしょう。センサーで衝突データを選択する代わりに、全てのデータが処理されます。これは15,000本の光ファイバーの新しい300mケーブルを使用して、地上のモジュラー設備への40Tbpsリンクを必要とします。

CERNの周りの他のデータセンターへのデータ誤送信を避けるために、モジュールは、単純に実験場のてっぺんに設置しなければなりませんでした。LHCbオンラインチームのN・ノイフェルト氏は次のように説明しています。「3km以上で40Tbps以上を輸送するのはコスト効率に優れていません!」

2つのモジュールがI / Oを処理し、CERNで使用される高速通信プロトコルに接続し、LHCbデータをフィルタリングして興味ある事象を検出し、ナンバー・クランチングに汎用GPUを使用します。一方、ALICE実験場では、事象選別用に別のモジュールが4個用意されています。

モジュールは、カスタマイズされたStulzシステムを使用して冷却されます。これは気化熱によって補う間接熱交換器で動作します。システム全体は、CERNのアルペン山脈に近い気候のおかげで、電力使用効率( PUE )は1.075以下と評価されるでしょう。

オートメーションのJ・ケイマン氏は、完全に冗長な電源は必要ないと指摘していますが、モジュールには信頼性の高い電源が備わっています。「パワーモジュールにAとBフィードを供給しています。ALICEシステムには小さいUPSがありますが、冗長性なしで設計されています。電源が落ちたら、粒子は発生しません」

CERNの最初のモジュール2個は2018年9月に納品されます。残りは2019年のロングシャットダウンの前にインストールされます。シャットダウン中にファイバー接続がインストールされ、2021年にLHCのスイッチが再びオンに切り替わる前にITシステムが構築され検証されます。

– Data Center Dynamics
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