Broadcom、Qualcommの買収を1,300億ドルで検討、本社の米国移転も計画

本社をアメリカに移転すれば、Brocadeの商談の延期要因となったCFIUSプロセスも回避可能

シンガポールに本社を置く半導体メーカーBroadcomは、本社を米国に移転する予定です。この移転は、同社が米国の外国投資委員会(CFIUS)による規制を受けないことを意味します。CFIUSにはBroadcomのBrocade買収を遅らせた経緯があります。Broadcomは、1,050億ドルと借入金250億ドルという規格外の買収額で、ライバルを買収しました。ハイテク企業の買収事案として、過去最大のものとなるでしょう。

設立の地へ帰ろう

Broadcomは元々、米国の半導体企業でしたが、2016年にシンガポールのアバゴ社に370億ドルで買収され、その結果、Broadcomと名前を変えて事業を展開することになりました。
アメリカのトランプ大統領は、ホワイトハウスの大統領執務室で「Broadcomが、シンガポールから米国に本社を移転する」とBroadcomの移転を発表しました。「BroadcomはFortune 100の企業であり、真に偉大な企業の一つです。Broadcomが作るのは技術と部品です。Broadcomは全米で7,500人以上のアメリカ人労働者を雇用しています。今後もその数字が大きくに増えることを期待します。Broadcomの米国への帰還は非常に特別で重要なことです。」と述べています。

BroadcomのCEOタン氏も、「私たちはアメリカをホームにします」と述べました。株主の承認が必要ではありますが、Broadcomの本社移転の時期は、共和党の税制改革法案を公にするタイミングに合わせて設定されました。この法案には法人税率の大幅な引下げ(35%から20%への下げ)が含まれ、法人の外国税を控除することを容易にします。

「アメリカは、もう一度世界のビジネスをリードする最善の場所になります。大統領に感謝します。ビジネスの状況は着実に改善しています。提出された一連の税制改革法案は、国際市場を公平にするでしょう。我々は効果的に競争できるようになります。」とタン氏は述べました。
タックス・カット・アンド・ジョブズ法が厳しい反対に遭っていることから、この法案が承認されることは確実ではありませんが、結果に関わらずBroadcomは米国に本社移転すると、正式に発表しました。

「今回の本社移転は、米国にとって年間200億ドルの収入になります。ここを起点にして、毎年、研究・技術分野に30億ドル以上、製造業には60億ドル以上を投資し、同様の高額報酬の技術職を生み出します」タン氏は言いました。数字の出どころは明らかではありませんが、Broadcomの昨年度の年間の海外売上高は132億ドルだったそうです。

本社移転の理由の一つは、CFIUSの監査プロセスを避けることができる点です。これは、買収を受ける米国企業が安全保障や知的財産権の点から懸念を表明した場合に、外国企業による買収を調査するものです。トランプ政権の下で、CFIUSは、中国企業キャニオンブリッジ社によるラティスセミコンダクター社の買収計画時もそうでしたが、買収計画を遅らせ阻止しようとさらに強力で積極的になっています。

CFIUSはBroadcomの計画した59億ドルのネットワーキング会社Brocadeの買収を繰り返し延期させました。Broadcomが米国に本社をおけば、CFIUSはBroadcomの事業には、もはや取り締まりの範囲外となります。

賢く計算

タン氏は積極的な買収戦略でBroadcom(旧アバゴ社)を拡大してきました。2013年には半導体とソフトウェア企業LSI社を66億ドルで買収し、ネットワーキング会社Emulex社を600百万ドルで買収しました。

彼の次の目標はもっと大きいです。

BroadcomはQualcommを1株70ドルで、これを株と現金で買収する計画を発表しました。この買収は負債も含めて総計1,300億万ドルになります。
「Broadcomの買収提案は、両社の株主および利害関係者にとって魅力的に見えるでしょう。当社の提案は、Qualcommの株主に、株式を現金で実質的、かつ、割増金として即時に提供するだけでなく、合併後の会社の潜在的メリットに参画する機会を提供します」とタン氏は述べました。
「規模の拡大と製品の多様化に伴い、顧客に先進的な半導体ソリューションを提供し、株主価値を向上させることができます」
Qualcommの大手顧客であったアップルとの不和が深くなり、同社の株価は今年、着実に下がっています。今回の買収は、半導体市場での大規模な統合を意味し、売上高で(サムスンとインテルに続く)世界第3位のチップメーカーとなる合併会社になるでしょう。

この契約の一環として、Broadcomは、Qualcommが2016年に380億ドルで買収することに同意したものの、現在も進行中の独占禁止法の監査により、実現できなかった欧州の半導体企業NXP社も買収も検討しています。NXPは、その前年に米国のフリースケール・セミコンダクター社を118億ドルで買収していました。
Broadcomの本社移転により、Qualcomm買収に関する議論からCFIUSが排除されることになりますが、独占禁止法などの通常の規制はそのまま残ります。

BroadcomのCFO、T.クローズ氏は次のように述べています。「当社製品の補完的な性質を考慮すると、Qualcommとの合併が完了するために必要な法的条件は、すぐに達成できると確信しています。Qualcommとすぐに話し合って最終契約を締結し、この取引を速やかに完了できることを楽しみにしています。」

– Data Center Dynamics
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