日本の商用データセンター – 進む統合と差別化

クラウドサービスとの競合/融合について

ここまで、都市や地方などの「立地」という観点から、データセンター事業の傾向をまとめてきました。しかし、近年のデータセンター事業を語るうえで「クラウド」について触れないわけにはいきません。

– Sebastian Moss

データ量が急激に増加してきており、それらを適切に処理するために、データセンターや自社の施設などに自前のサーバーなどを置かず、AWSなどの「パブリッククラウドサービス」を使ってデータ管理を行う選択肢もユーザーにはあるのではないでしょうか。

何よりも、特にセキュリティレベルや冗長レベルなどを気にしないユーザーにとっては、データセンター事業者の比較などの手間暇をかけずに、さくっとWeb上からAWSやAzureといった機能を使えるのは非常に魅力的です。

「パブリッククラウドサービス」を使うほうが、コストが安く済むケースが多いですが、 その一方で、 OS」、「ソフトウェア」、「回線」などはクラウドサービスプロバイダーが指定したものしか利用することができず、システムなどの設計の自由度は低いと思われます。それらの点に不満がある方々におすすめなのが、「プライベートクラウドサービス」です。

このサービスは、データセンターなどが独自の施設を活用して提供するクラウドサービスで、利用企業はサーバーなどのIT機器を用意する必要がなく、「OS」、「ソフトウェア」、「回線」などについては企業が独自にカスタマイズしコントロールができます。

データセンター事業者にも、IDCフロンティアのように、ハイブリットクラウドという従来データセンターが提供していたオンプレミス型などのサービスの良いところを、クラウドサービスへ取り入れる事業者も出てきています。(オンプレミス型の場合ネットセキュリティを完全自社に合わせて設定できるので場合によってはハイセキュリティが実現できるという点などをクラウドサービスに含ませている)

潤沢な資金やノウハウのあるデータセンター事業者は、自社でのクラウドサービス提供や、AWS/Microsoftなどのパブリッククラウドサービスとの連携を強めていく傾向もみられています。

今後は、クラウドサービス事業者との競合をますます激しくさせていくか、あるいは、違う魅力を押し出して競合を避ける方向に行くか、事業者ごとに戦略が多様化していくと思われますが、技術的な側面だけをみれば、クラウドとの連携がしやすいデータセンターサービスの提供へと取り組んでいく動きが多くなるのではないでしょうか。

不動産投資対象についてのデータセンター

さて、最後となりましたが、そもそも日本のデータセンター市場は今、成長産業なのでしょうか。欧米においては、既に重要な不動産投資の対象になっており、アメリカのREIT市場では、2015年から1つのセクターとして扱われているようです。

日本においては、データセンターが投資対象とされるケースがあまりなかったのですが、ここ数年間で、不動産関連ファンドにおいて、投資価値のある物件がマーケットに出てきた場合に備えて投資実行の準備がされているようです。実際に不動産投資会社のCBREは、2017年に「新たな投資対象として成長が期待されるデータセンター」と題したレポートを発表しています。

実際には、日本国内のデータセンターの多くが築古物件となっている現状において、データセンターを自社で抱え続けるリスクは高まっていると言えるようです。では、古くなったデータセンターを取り壊して、新しいものを積極的に新築していくかと言われると難しいところです。新設には、主に下記のような検討事項が付きまといます。

  • 建築費用などの金銭的課題 
  • 現在/将来の収益性、競合との差別化方法などの経営的課題
  • 新興技術の理解やノウハウ蓄積などの技術的課題

IT調査会社のIDCが行った調査では、日本だけではなく世界的にもデータセンターの数は2015年から減少へ転じていることが判明しています。本記事の冒頭でも述べた様に、「データ量は増えているのに、データセンター数は減少していく」という一見矛盾する事実の裏には、データセンターの集約化が進み、多くの売上が一部のデータセンター事業者へ集まっていく傾向があるのです。

そこで、近年は自社で保有するよりも賃借する方がリスクを抑えられるため、「セール&リースバック」などを活用し不動産としてのデータセンターを売却し、IT分野での価値に着目した投資を実行していく可能性があるのではないかと思われます。

さて、日本のデータセンター事業者各社は、今何を考えているのでしょうか。積極的に売上シェアを伸ばしていくのか、あるいは自社の得意とするビジネスモデルを展開させていくのか。いま、データセンター事業にもビジネスをデザインする知恵が求められています。

DC ASIA Ltd.

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