データセンター/ サーバ室技術ガイドブック【特集】①

データセンターの利用をより促進するとともに、データセンターの効率的で適切なサービス品質を実現する

【第1部:データセンターとは】

あらゆる産業分野でのデジタル・トランスフォーメーションの進展、新産業・新事業の創成に向けた活動の活発化などにより、コンピューティング需要は一層増大し、急拡大しています。コンピューティング需要の増大に伴い、データセンターの重要性も高まり、データセンターの最適運用とともに、そのリスクを管理、低減することが重要になっています。

そこで、データセンター内に存在するサーバなどの電子機器が良好に稼働するために必要となる、データセンターのサーバ室を中心とした計画・設計・構築についてのガイドライン、ベストプラクティスをガイドブックとしてまとめるワーキンググループとして2017年1月に「サーバ室技術ガイドブック ワーキンググループ」が発足しました。このワーキンググループは、JDCCに加え、オープン技術を用いた省エネルギー化の取組を推進している東大グリーンICTプロジェクト(GUTP)との共同ワーキンググループとして活動しています。

これまで各事業者の経験と知見に基づき、設計・構築・運用されてきた事業者および企業内のデータセンターでは、効率(経済性)と性能(信頼性と可用性)の両面で其々課題を持っており、場合によってはKKD(勘、経験、度胸)で運営されていることも少なくなく、さらにデータセンターの設計・構築・運用が細分化され、部分最適化された運用が行われ、全体構成を俯瞰したデータセンターの設計・構築・運用の全体設計・最適化が実現されている例は少ない状況です。

この状態から脱却し、データセンターの全体を俯瞰しながら、論理的な事業計画の立案を可能にすることにより、データセンターにおける事業・運用リスクの管理とその低減、さらにデータセンター事業のオーナ視点からの「今後のデータセンターの全体計画・全体設計に資する指針と知見」が求められています。

また、多くのデータセンターにおいて、ファシリティとICT機器が個々に管理・運用されており、電力消費などさまざまな業務の効率の点で無理・無駄が出ており、データセンター全体の見える化(把握・管理・制御)を踏まえた俯瞰的で適切な運用が求められています。

データセンター – JDCC

東京大学TSCP(東京大学サステナブルキャンパスプロジェクト)において先行して制定された、「サーバ施設高効率化に向けたガイドライン」(2016年12月12日制定)をベースに、より汎用性の高いデータセンター向けのガイドブックを目指して、データセンターの利用をより促進するとともに、データセンターの効率的で適切なサービス品質を実現する取組みとして、「データセンター サーバ室技術ガイドブック」初版が2019年6月10日に開催された、JDCC10周年記念総会に合わせて出版されました。

本記事では、そのダイジェスト内容を複数回のシリーズ記事に分けて紹介します。海外の最先端な取り組みや様々な経験・知見を総合的に整理し纏められた本書は、 今後の日本国内のデータセンターの設計・運用の最適化を図るうえでの一つのバイブルとなるであろうと考えます。

データセンターの役割とサービス

まず、データセンターの役割とは、お客様のIT資産を預かり、専用の設備と専門のスタッフの運用により、そのIT資産を安全に運用をすることです。具体的には、 可用性・信頼性を維持し、設備面でのリスクを最小限に抑え、また日常の運用業務やインシデント時の対応を迅速に行うことで、お客様のサービスリスクを最小限に抑えます。

データセンターのサービスレベル – JDCC

しかし「データセンター」と一言で言っても、企業によって様々なサービス形態が存在します。施設の建物からラックあるいはICT機器までのどの範囲までをサービス範囲とするかによって形態は異なります。

まずは、それぞれデータセンターの利用目的に応じたサービス提供範囲の違いを理解したうえで、施主(データセンター利用者、事業者)の立場において、ベンダー都合で不利益を被らない、あるいは施主側としての利益を創出し、同時に市場競争力を獲得するために、データセンターの各コンポーネント別に基本の考え方やガイドラインの理解をすることが重要です。

ガイドブックでは大きく、建物・設備、サーバ室設計・運用、ICT機器選定・設置・運用などに分類して解説しています。

データセンターとは

データセンターの設備とその特徴

データセンターとは、様々なICT機器(サーバ、ネットワーク機器、ストレージ等)を設置し、運用することに特化した建物と設備の総称です、その施設を利用して行われるサービスも事業者によってその規模や業態は多種多様です。

データセンターの設備は、建物、データセンター内の電源設備(UPS、発電機、分電盤など)、その他設備(冷却装置、照明、セキュリティ設備、防火・消防設備など)、そしてサーバ、ストレージやネットワーク機器などのICT機器に大き分類されます。また、それぞれの設備はデータセンターに特化した特徴を持っています。

データセンターの設備 – JDCC

  1. 建物
    • 災害時にもサービスの提供に極力支障が出ないように建物自体が耐震構造となっており、免震機能を持つことも多い
  2. 電源
    • 電源供給の安定化の為、複数の受電系統と変電設備を持ち、UPS(無停電電源装置)と自家発電装置等を備えることも多い
  3. 空調
    • ICT機器や電力設備を安定的かつ効率的に冷却する各種空調機器を備えている
  4. セキュリティ
    • 情報システムを守るため、厳密な入退館、入退室管理や館内外監視が実施され、高いセキュリティを実現している
  5. 通信回線・設備
    • 利用者の情報システムが電気通信事業者の光ファイバなどの通信回線を利用可能とする為、これらの通信環境に接続する為の基幹のネットワーク設備を備えている
  6. 人材
    • 専門性を持った要因がオンサイトあるいは遠隔センターにて24時間365日体制で建物、電源、空調、ネットワーク、セキュリティ等の運用を実施し、加えて利用者への支援サービスを提供している
  7. 資源の集約と共有
    • データセンターでは建物、電源、空調、ネットワーク、セキュリティといったインフラ機能やそれを提供する設備を、複数の利用者の情報システムにおいて共有することにより、高品質なインフラの提供と安定的な運用を低コストで実現している

データセンター性能を知るキーワード

データセンター設備も大小さまざまな事業者が事業を展開しており、利用ユーザーとしても費用や立地以外にも性能について気になるところだとおもいます。データセンターの性能を示すいくつかのキーワードとしては例えば以下のようなものがあります。

  • Resillency(レジリエンス力・回復力)
    • 正常な運用に対して、間違いや課題に直面した時に許容できるレベルのサービスを提供し、サービスを維持し、回復する能力
    • 弾力性あるいは強靭性ともいわれる
  • Redundancy冗長性
    • システムの信頼性または可用性を高めるために、システムの重要なコンポーネントを重複化する
    • バックアップまたはフェールセーフとも呼ばれる
  • Availability可用性
    • 予め合意された時点または期間にわたって、要求された機能を実行するコンポーネントまたはサービスの能力
    • 使う必要があるときにいつでも使えるようになっているか
    • 通常は合意したサービス期間中に占める実際に顧客がサービスを利用可能な時間の割合で表される
  • Reliability信頼性
    • システムまたは危機が一定の時間に一定の条件のもとで必要な機能を実行する確率
    • 一定期間ずっと動いているべきものがどこまで落ちずに動いているか

データセンターのライフサイクル

データセンターのライフサイクルを考えるにあたり、耐用年数が40~50年と長い建物から15~30年と比較的耐用年数が長い設備(しかし柔軟性が低い)を、耐用年数が3~7年と短く技術革新が速いICT機器にいかに追従させるかが重要となります。

データセンターのライフサイクル – JDCC

10年先程度の将来はある程度予測できますが、それ以上の予測は難しく、少なくとも設備機器においては、柔軟にスケールアップ、スケールアウト、あるいはモジュール化ができる構成を備えておくことが重要です。

ここでは、現在実用化されているかあるいは今後1年程度で普及が見込まれる技術や運用などのヒントをメインに紹介していきます。


2019年6月10日の JDCC総会に併せ、JDCC10周年記念出版

【総監修】

JDCC運営委員長/GUTP 代表
東京大学大学院 教授 江崎 浩

【監修】

JDCC運営委員(サーバ室技術ガイドブックWG リーダ)
尾西 弘之
株式会社大谷技術士事務所 大谷 淳一

詳しくは、「データセンター サーバ室技術ガイドブック」をご覧ください。

次回以降、以下のようなコンテンツの一例をダイジェストで掲載しますので、 引き続きお楽しみください。

  • 都市伝説「サーバは冷やす」
    • 空冷のカバレッジ
  • サーバラックの基本仕様
  • サーバ室内でのエアーフロー
    • バイパス・回り込みとは
    • その他の注意点
    • サーバラックのエアーフロー対策
    • サーバラック下部での対策
    • 省電力化シナリオ
  • 温度分布
    • サーバ室改善の進め方
    • CFDによる対策案の検討
      • 実測/CFDとのGAP分析例
      • 効果のシミュレーション
  • エアーフロー対策例
    • 実践例での効果(コールドアイル温度)
    • 空調電力の削減効果
  • サーバ機器類の適正冷却温度

JDCC/GUTP共同ワーキンググループ / サーバ室技術ガイドブックWG

一部内容編集:DC ASIA