【特集記事】自然災害への備え

”地球温暖化は世界中の水位を上昇させます。データセンターは洪水に備える必要があります”

気候変動が急速に進むにつれて、極端な気象現象が増加し、海面も上昇しています。 確実に機能することが期待されているデータセンターや 海底ケーブル 陸揚局などの重要なインフラ設備は、水の浸入や洪水の危険にさらされています。

洪水や水の浸入は大規模な集中豪雨の際に発生する可能性がありますが、通常の気象条件においても水は厄介なものであり、漏水により施設の信頼性や性能が低下することがあります。そこで、これらのリスクを大幅に減らす為に、水の浸入を制限する方法があります。

Uptime Instituteの調査によると、データセンターの約半数は、なんらかの停止障害を経験しています。Ponemon Instituteによると、停止による平均損失額は70万ドルを超えると伝えています。

大多数の障害は UPS の問題か、人的な作業ミスによって引き起こされますが、 気象に関連して発生する事象の中でも洪水リスクの可能性は高く、 発生率は年々増加していると予想されています。

災害は必ず来ます

2012年に、ハリケーン”サンディ”はニューヨークで大規模な被害をもたらし、 マンハッタン南部のいくつかのデータセンターが停止しました。地下室や発電機室が浸水し、設備機器の完全交換を余儀なくされました。2016年、イギリスのリーズにあるAire川の堤防が決壊し、洪水がボーダフォンの施設内に到達し、システムが数日間停止しました。

立地は自然災害に対する最善の防御策です。サイトの選定には、環境、気候、電力、光ファイバの接続性、人件費、税金などの要素は既に考慮されていますが、自然災害の発生危険性も評価項目に加え、洪水が起きやすい地域を避けるべきです。

サイト選定に役立つ業界標準ガイドラインがあります。たとえば、データセンターの信頼性に関するAmerican National Standard( ANSI )が定めた TIA-942 には、火災、洪水、暴風など災害の危険からサイトを守るためのガイドラインが含まれています。TIA-942では、 Tier IVデータセンターは過去100年間に氾濫した地域から最低300フィート(91 m)以上、そして沿岸や内陸の水路から最低0.5マイル(0.8 km)以上離れた場所に配置する必要があるとしています。

自然災害が発生しやすい地域は、FEMA、USGS、NOAA、欧州委員会、欧州環境庁などの機関が発行する、竜巻、ハリケーン、地震、洪水に関する過去のデータから特定できます。(※日本国内では国土交通省や各自治体建設局等々が発行した情報を参照)

洪水危険区域外であっても、標高、傾斜、地下水位などのサイト固有の要因も考慮する必要があります。ANSI / BICSI 002 – 2014では推奨ガイドラインを提供しています。

他のリスクを減らすための判断が、逆に洪水による危険性を増加させることもあります。例えば、架空送電線への損傷を避けるために、電源・通信ケーブルを地下に設置するケースがありますが、地下水面が上昇すると、ダクトや侵入口が危険にさらされる可能性があります。

ANSI / BICSI 002では、ユーティリティダクトは地下水面上に配置し、メンテナンス用のマンホールなどは水の侵入ルートとして再認識する必要があります。

通常の降雨量であっても、光ファイバーや配電用のダクトに浸水することがあります。これは、短絡などの瞬間的な障害を引き起こすだけでなく、長期的な問題も引き起こします。浸水を汲み出すことは厄介であり、そして高湿度レベルはスイッチギヤ(=電気開閉装置)を機能不全にし、部分放電やブッシュの破損を引き起こす可能性があります。湿気は絶縁系を劣化させ、腐食を引き起こします。他の汚染物質の存在下での湿度も部分放電を増加させる可能性があります。

ダクトの設計は、建物や機器から水を遠ざけるように傾斜させる必要があります。また、地下室は地下水面の上方に設置する必要がありますが、発電機、開閉装置、 ロードバンク(負荷試験装置) や変圧器につながる地下室や配管ダクトに水が入る可能性があります。

準備しましょう

長期的には、湿気は「水トリー( 高圧ケーブルの絶縁体に侵入した水分が樹枝状の亀裂を生じる状態) 」を引き起こす可能性があり、絶縁劣化がひび割れを伝播し、最終的にケーブルの破損につながる可能性があります。水トリーは、製造中や輸送中、あるいは作業中の引っ張りなどから発生するケーブルのストレス箇所から始まります。

– Thinkstock/inusuke

これらの環境に最適化されたケーブル(例:TR-XLPEやLC)を使用すると、このリスクを減らすことができますが、すべてのケーブル障害がケーブル絶縁の破壊によるものではありません。スプライス、結線、および接合部もまた、不十分な施工により水の浸入につながる可能性があります。

電源ケーブルと同様に、同じく考慮すべき事項は地下に設置された光ファイバケーブルにも当てはまります。ひび割れに染み込んだ水分子は信号の減衰を引き起こし、コネクタは腐食し、凍結すると機械的損傷を引き起こす可能性があります。

屋外ケーブルは、水の浸入を最小限に抑え、過酷な環境に耐えるためにゲル充填チューブまたは水膨潤性材料を使用しますが、電源ケーブルと同様に、コネクター部が最も弱点と言えます。水の浸入を防ぎ、湿気を最小限に抑えることが、重要な光ファイバ設備を保護するための最善の方法です。

将来はどうでしょう?気候変動はインフラ設備にとって最大の脅威となる可能性があります。英国では、DEFRA(英国の環境・食糧・農村地域省)のAEAの報告によると、洪水の増加は電波塔、 送電用鉄塔 、データセンター、電話交換局、無線基地局などを含む重要な設備の損傷を引き起こすと予想されています。

米国では、米国地球変動研究プログラム(USGCRP)の第3回National Climate Assessmentで同様のリスクを報告しています。

過去1世紀にわたり、世界の平均海面水位は約20㎝上昇し、今世紀中には30〜120cm上昇すると予測され、土壌浸食、高潮被害、そして沿岸地域での洪水の危険性が高まっています。米国では、ボストン、ニューヨーク、マイアミ、サンマテオ、ニューアークなどの大都市を含む490近くの地域が、今世紀中に慢性的な浸水被害に直面すると言われています。これらの都市にあるデータセンターは当然洪水の危険にさらされます。

直近の論文「Lights Out:インターネットインフラストラクチャに対する気候変動のリスク」では、2030年までに海抜1フィートの上昇で235のデータセンターが影響を受け、771の POP 、53の 陸揚局 、42の IX が影響を受けると予測しています。

控えめな予測ですが、今世紀末までには4,067マイルの光ファイバーダクトが水没するでしょう。これは、耐候性と耐水性を考慮して設計されていますが、水没を考慮して設計されていません。また、これら設備の一部は20年以上前から使用されています。

データセンターにとって、他の危険範囲として、屋上のケーブルやパイプ、外壁にある電源システム、または外部回線引込室への接続箇所などが含まれます。建物の外壁を貫通するすべての箇所は、潜在的な漏水箇所となり得、適切に封印されるべきです。

新しいデータセンターは沿岸地域以外にも建てることができますが、特定の地域では大規模な暴風雨の発生が増加しています。気候が1℃上昇するごとに、大気中の水分は7パーセント多くなります。3〜5℃と予測されている世界的な気温上昇に基づくと、将来豪雨はさらに頻繁に発生し、局所的な洪水を引き起こし、 洪水危険エリアも拡大していく可能性があります。

警告をしているにもかかわらず、最近行った867社のデータセンターに対する調査では、気候変動を考慮し「気温の上昇、洪水の増加、または水不足に基づいてサイト選定を再検討する」と答えたのはわずか14%でした。洪水リスクの増加を軽減するための対策を講じている人の割合は11%に留まりました。

この結果は、まだごくわずかですが、気候変動と洪水の脅威が認識され始めていることを示しています。将来のデータセンターは水害の脅威から保護しなければなりません。既にいくつかのサイトでは積極的な対策を施され始めています。

【著者】 Jason Hood氏 Roxtec International

Data Center Dynamics

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